関東田震災の直後、31歳の八十は3歳の次女・慧子を疫痢で失います。

 

遣る瀬無い時を共有する夫婦。
「あの子はあんまり利口だったから、神さまも近くに置きたくなったんだよ」と八十は呟きます。その言葉を噛みしめるように頷く奥様。

 

 

三七日                    西條 八十

吾児はあまりに美しく聡かりしゆゑ

神の奪りたまへるなり。

われの語れば妻は静かにうなづく。

慰むる者は偽と知りつつ慰め

聴く者も偽と知りつつ満足ふ。

寂しき三七日