葛飾にバッタを見た なぎら健壱

葛飾にバッタを見た

昨日バッタリ道端で昔の友達にあって
お前この頃どうしているんだ そういわれたのだが
ギターをかかえ歌を歌っているとは とてもいえなかったし
俺もやっと会社で役付になれたと そういわれたとき
俺はいまだに日本中をぶらぶらしているとは とてもいえなかったし
お前どこに住んでいるんだ 俺は今東京の青山のマンションにいるんだけれど
俺はいまだ柴又の片向いたアパートにいるとは とてもいえなかったし
今度一度遊びにこいよ そしたら車で迎えにいってやるからさ
僕はいまだホンダのカブのバイクしきゃ
乗ったことがないのに、やつは車にのっているんだろうかと
嫉妬に頭をくらくらさせながらも 彼の後についていくのだった
まあちょっとメシでも喰いに行こうと 高級レストランの前に立ったのだが
僕はホークとナイフの使い分けもできないので
すきっぱらをかかえて 今日は腹いっぱいなのだからと断ったのだ
彼が現在の話をするたびに 僕は顔で笑っているだけだった
それじゃまたなと一人でしゃべり 行ってしまう彼に
僕はとても小さな声で
とても小さな声で
お前の住んでる所には
お前の住んでる所には
金持ちやマンションがうんざりするほど
うんざりするほどあるかもしれないが
お前の住んでる所には
バッタの一匹も見られないだろうってね
昨日江戸川を歩いていたら
空はうそみたいにきれいだったし
そして地上にはほら バッタが遊んでいたし
あんたが葛飾にやってきたら 柴又にいってみるといいよ
マンションも金持ちもいないかわりに
バッタの一匹も見られるかも知れないからってさ
昨日江戸川を歩いていたら
空はうそみたいにきれいだったし
そして地上にはほら バッタが遊んでいたし