れんしゅう まど・みちお
きょうも死を見送っている
生まれては立ち去っていく今日の死を
自転公転をつづけるこの地球上の
すべての生き物が 生まれたばかりの
今日の死を毎日見送りつづけている
なぜなのだろう
「今日」の「死」という
とりかえしのつかない大事がまるで
なんでもない「当たり前事」のように毎日
毎日くりかえされるのは つまりそれは
ボクらがボクらじしんの死をむかえる日に
あわてふためかないようにと あの
やさしい天がそのれんしゅうをつづけて
くださっているのだと気づかぬバカは
まあ この世にはいないだろうということか