仏教界隈2 お弁当

その日、墓前には綺麗なお花、好きだった缶ビールを数本、そして、お弁当がお供えしてありました。

 

お弁当は、奥様のお手製。というのも、お連れ合いになってからの40年、ご主人は奥様の作ったお弁当を持って仕事に向かわれた。

 

そして、今日の納骨の日。ご主人がお使いになっていたお弁当箱に、好きだったものを入れて持たせたいと思ったとのこと。
「でも、お墓にお弁当は変かしら」と、奥様は遠慮がちに語られた。

 

パセーナディ王は、母親の埋葬後、お釈迦さまに「亡き人に供養するとは、遠き人に餉(かれいい)するがごとし」と諭されました。

 

つまり、お釈迦さまは仰るのです。大切な方を供養するというのは、遠方に出かけていく方にお弁当を手渡すような心持でなさい、と。遠方に行くのだから、腐りやすいものは控えなければならないでしょう。また、せっかくお召し上がりいただくのだから、美味しいもの、滋養があるもの、ふっと心が和むものを持たせてあげたい。

 

「これからもお墓参りの時には、お弁当を作ってきますね」と、奥様は自らを励ますように述べられました。