秋は一夜に 金子みすゞ

秋は一夜にやつてくる。

二百十日に風が吹き、
二百二十日に雨が降り、
あけの夜あけにあがつたら、
その夜にこつそりやつて來る。

舟で港へあがるのか、
翅でお空を翔けるのか、
地からむくむく湧き出すか、
それは誰にもわからない、
けれども今朝はもう来てる。

どこにゐるのか、わからない、
けれど、どこかに、もう來てる。