時 坂村真民

日の昇るにも
手を合わさず
月の沈むにも
心ひかれず
あくせくとして
一世を終えし人の
いかに多きことぞ
道のべに花咲けど見ず
梢に鳥鳴けど聞かず
せかせかとして
過ぎゆく人の
いかに多きことぞ
二度とない人生を
いかに生き
いかに死するか
耳かたむけることもなく
老いたる人の
いかに多きことぞ
川の流れにも
告げ給う声のあることを
知ろうともせず
金に名誉に地位に
狂奔し終わる人の
いかに多きことぞ
生死事大無常迅速
時人を待たず  臆々