お釈迦さまの「メタボの方のための説法」とも言ってもいいでしょう。
私事ながら、耳の痛いお話しです。
「現在と未来の利益」
南伝 相応部経典 3、13 大食
漢訳 雑阿含経 42、1150
かようにわたしは聞いた。
ある時、世尊は、サーヴァッティー(舎衛城)のジェータ(祇陀)林なる給ぎっ孤独こどくの園にましました。その頃、コーサラ(拘薩羅)の王パセーナデイ(波斯匿)は、大食を常とし、身体すこぶる肥え太っていた。その日もまた、王は例のごとく、大いに食い終わって、その肥大せる身体に大汗をかき、大息をついて、世尊のもとに来たった。
世尊は、王のそのさまを見て、偈をもって教えて言った。
「人はまさに自ら懸念けねんして、量を知り食をとらねばならぬ。さすれば、その苦しみ少なくして、老いること遅く、よく寿を保つであろう。」
その時、スダッサナ(善見)と名づくる1人の少年が、座にあって、王の後に立っていた。王は、その少年を顧みて言った。
「スダッサナよ、なんじは世尊によって、いまの偈をそらんじ、わたしの食事の時に誦するがよい。わたしは日々なんじに百銭ずつ、常時の施をなすであろう。」
「大王よ、かしこまりました。」
そこで少年は、世尊のもとにあって、この偈をそらんじて、かの王の食事のたびに、これを誦した。
「人はまさに自ら懸念して、量を知り食をとらねばならぬ。さすれば、その苦しみ少なくして、老いること遅く、よく寿を保つであろう。」
かくして、王は、しだいに食の量を減じ、1ナーリの量にて満足するようになった。身体はしだいに肥大を減じ、健康を加え、容貌また端正となった。王は、その手をもって身体を撫し、世尊のいます方を拝して、歓喜して、三たび言った。
「まことに、世尊は、二利をもって、わたしに恵みたもうた。わたしは、現在の利益と、未来の利益とを得ることができた。」
増谷文雄著 『阿含経典による仏教の根本聖典』 大蔵出版