彼岸到
彼岸には、布施<分け合う事>、持戒<慎む事>、忍辱<忍ぶ事>、精進<努力する事>、禅定<心を静める事>、智慧<学ぶ事> を実践していくことによって、迷いのこの岸から悟りの彼の岸に渡るという意味があります。
けれども禅では、もっと深く彼岸を受けとめます。
それは、迷いと思っているこの岸こそが、悟りの彼の岸でもあるのだよ、という事であります。つまり、遠くの彼の岸を見て、足元を忘れちゃいけないよ、というのです。
この岸、つまり、「今・ここ」を大切にする歩みを深めることで、この岸も彼の岸もないというへだてのない世界、つまり、ひとつながりの世界に気付く、それが禅であります。
たとえば、私たちには夢や目標があります。その夢や目標に向かって計画を立てて実行していく。夢が叶えば、当然嬉しい。
けれども、挫折や失敗することもあります。そんな時、私たちは言い訳をしたり、人のせいにしたりする癖が出てしまいがちです。
でも実は、夢に向かって歩いているその歩みこそが、夢の達成であり、夢が叶ったその瞬間と同じくらい大切なはずなのです。そう言える視点、ものの見方が禅なのであります。
遠くの結果を見つめるのではなく、今・ここの足元を大切にする歩み。
そこに必ず、穏やかな心持ちと生きる勇気が現れてきます。
彼の岸と此の岸は離れていない。
ひとつながりであります。
「今・ここ」をしっかりと受け止めて、互いに歩みを深めてまいりましょう。