春に百花あり 秋に月あり 夏に涼風あり 冬に雪あり 『無門関』

 

春に百花の咲く美しさは、百花の散る哀愁を伴っている。

秋にさえわたる月のしずけさは、その雨や雲に妨げられる嘆きをもたらす。

夏の涼風は炎熱の不快と共にあり、冬の雪には酷寒の恨みが添うている。

平常心は、善悪、美醜、喜怒、哀楽の渦中にあるのが現実である。
           柴山全慶老師 『無門関講話』 創元社