良寛さん

四十年前行脚日
辛苦画虎猫不似
如今嶮崖撒手看
只是旧時栄蔵子

 

四十年前 行脚の日
辛苦 虎を画いて猫にも似ず 
如今 嶮崖に手を撒って看るに  
只是れ 旧時の栄蔵子  

 

四十年前 命を賭して修行遍歴をした
精進して虎に成るつもりだったけれども 結局は 猫にさえ似なかった
這い登ろうとしていた崖から 今 ゆっくりと 手を離してみれば
何の変わりのない 昔の栄蔵のままだ