焚くほどは夜の間に溜る落葉哉          早野巴人『夜半亭発句帖』

焚くほどは風がくれたる落葉かな         小林一茶『七番日記』

堂久保登盤 閑勢閑毛天久留 於知者可難     五合庵跡に建つ句碑

尚、『良寛全集』大島花束編には「たくだけは」という表現の句もあり

 

 

風と落ち葉        拙著『運を活きる』より

出家して間もない頃の秋の黄昏時でした。

あるお寺の前で托鉢をしていた時、ふと、目に留まった伝道掲示板に、良寛さんの句が書いてありました。

 

焚くほどは  風が持てくる  落ち葉かな 

これを見たとき、なんとも言いようのない感動と深い喜びを得ました。
なんだ、これで良かったんだ、と。

 

 

落ち葉を持ってきたのは風です。

足りないからと多くを求めても、枯葉にも限りがあります。

いらないからとそっぽをむいても、あるだけは、与えられます。

足りないからと、欲を起こせば苦になります。

しかし、今、焚くだけはあるのです。

焚くだけはある、という信念。

いらないからと、逃げても逃げられません。

受けるべきものは、受け止めなくてはならないのです。

風を素直に受け入れる、という覚悟。  (以下略)